中小企業の資金繰りを改善すべく「約束手形」決済60日に短縮・廃止へ
News Letter 2024年4月号
こんにちは。税理士の駒井です。
今日は約束手形の改正について解説致します。
さて皆さま、約束手形を利用したことはありますでしょうか?
約束手形とは、期日までに決められた金額の支払いを約束する有価証券の1つです。
約束手形の代金を支払う側を「振出人」、代金を受け取る側を「受取人」と呼びます。
手形を発行することは「振り出し」といい、振出人が受取人に対して約束手形を振り出すことで、現金での代金決済の代わりにすることが可能です。
ただ、現在の約束手形は、振出人のメリットの方が多く、受取人にとっては大きなリスクを伴うケースが多いことが問題としてありました。
約束手形の代金を支払う側メリット◎ | 約束手形の代金を受取る側デメリット△ |
・支払いを先延ばしできることで資金調達のための期間が猶予できる ・取引に利子がかからない ・会社が社会的信用を得られる | ・入金が遅い ・郵送料の負担を求められるケースがある ・取立手数料を支払う必要がある |
今回の改正では、手形発行から入金までの時間を短縮し、デメリットを緩和する改正が発布されました。
手形発行~入金までにかかる日数を120日→60日に短縮(2024年11月から適用予定)
例として、A社:大企業が、B社:中小企業の商品・製品を購入(仕入れた)場合にて説明しましょう。
この場合 A社:大企業が約束手形の振出人、B社:中小企業が受取人になります。
B社:中小企業(受取人)からA社:大企業(振出人)へ納入
B社:中小企業(受取人)からB社の銀行へ現金化依頼
A社:大企業(振出人)とA社の銀行で入金・引き落としのやりとり
B社の銀行からB社:中小企業(受取人)へ入金
さらに、STEP3とSTEP4の間では、B社の銀行とA社の銀行のやりとりとして、電子交換所を介して手形のイメージデータを送受信して確認する工程があります。
いかがでしょう? すごく時間と手間がかかっていると思いませんか?
今回の改正では、STEP2(手形発行)からSTEP5(入金)までの期間を最大で約半分に短縮される発表がありました。
2026年までに約束手形が利用廃止されます。
また2026年度末まで全面的な電子化の方針が示されます。
2024年11月からデメリット緩和改正が適用される予定の約束手形ですが、最終的に2026年には利用廃止となります。
また約束手形にかぎらず、税理手続き全般において全面的な電子化を進められていますが、2026年度末までに電子化の方針が示される予定となりました。
電子化活用のメリット
業務負担軽減 | 現物管理不要 | コスト削減 | |
支払側 | 手形の発行や郵送作業などの事務負担軽減 | ペーパーレス化により紛失・盗難、災害などの心配がない | 郵送料や手形帳代金不要 |
受取側 | WEB取引完結 | 入金期日に自動入金される | 領収書不要 |
さらに、今後は電子記録債権やインターネットバンキングによる振込に移行にしていく動きがあります。
まだインターネットバンキングでの振込に慣れていないお客様がいらっしゃいましたら
電子化の波はすぐそこまで迫っておりますので、今から準備をしていきましょう!
約束手形の廃止に伴う代替案「でんさい」とは?
約束手形が2026年に廃止されますが、代替案として「でんさい」を推奨されています。
「でんさい」とは、事業者の資金調達の円滑化などを図るべく創設された「株式会社全銀電子債権ネットワーク」(通称:でんさいネット)が取り扱う電子記録債権です。
紙の手形の問題点を克服した金銭債権として多くの企業が活用しています。
支払側 | ペーパーレスだから手続きが楽! 送付費用もゼロ 印紙税は課税されません 支払手段の一本化で効率的 |
受取側 | ペーパーレスだから保管も不要 必要な分だけ分割して譲渡や割引ができる 入金期日に自動入金されるので取引手続き不要 債権を有効活用でき資金繰りに役立てれる |
でんさい利用方法
手順1:取引金融機関に利用申込書を提出します。
手順2:取引金融機関の審査を経て利用契約を締結します。
手順3:取引金融機関から「利用者番号」(英数字9文字)が割り当てられます。※利用開始手続は、支払先となる取引先の「利用者番号」と口座情報が必要になります。
上記の手順で利用申込をすることででんさいを使えるようになるので、利用したい方は登録してみましょう。